カルネージハートエクサをひさしぶりにやってみて思うこと
カルネージハートというゲームをご存じだろうか。
ロボットを制御して敵勢力を倒す戦略シミュレーションである。
これがなかなかにややこしく、とっつきにくく、一言で言うとムズい。マニアの間では好評を博したようでいくつか続編が作られている。
俺もそのマニアになるべく、大学時代に「カルネージハートEZ」をPSPでダウンロードした。EZとは簡単、Easy Zappingのことらしいが、いきなり戦場に放置されて敵にぼこぼこにされた。ここで1度目の挫折。
よくよく調べてみるとどうやらチュートリアルが充実したPSP版「カルネージハートエクサ」なるものが発売されているとわかり購入。
が、途中で挫折。2度目の挫折。
俺は飽きっぽい。数多くのゲームタイトルをやってきたという自負はあるが、全クリした本数は両手の指におさまるほどだ(足の指も含めていいかもしれない)。
飽きたのもあるが、単純に難しく、途中で詰まって投げ出してしまったのだ。
その後社会人になり、薄給で買ったPS Vitaにカルネージハートエクサをダウンロードした。
3度目の挑戦。
そして3度目の挫折。
飽きっぽいのだ。1回途中までなぞったストーリーをもう一度なぞることが性格上できなかった。俺は悪くない。俺の性格が悪い。俺が悪いのか。
そんな俺も4月から職業訓練を学び、C言語を一応扱えるようになった。プログラミングに必要な論理的思考も少しは養われたはずだ。
そう、このゲームは論理的思考が必要なのである。
ロボットを制御するには疑似プログラミングのような方式をとる。
命令が書かれたチップをパズルゲームのようにはめ込んでロボットを自動で動くように処理してあげるのだ(ボタン操作でロボットを動かす方法もある)。
たとえば、上ボタンを押したらロボットが前進するように制御するとしよう。
その場合、
・ボタン入力を受け付ける
・上ボタンが押される or 押されない
・前進する(何メートル動くのか、ボタンを押している間なのか、途中の入力を受け付けるのか)
という3つのチップが必要になる。これだけでも面倒くさいのがわかると思う。ゲーム製作者はこのように面倒な作業を裏で行っているのである。感服する。
このロジックを少しばかり会得しているので今ならばサクサク攻略できるのではないか。と思い立ち、数年ぶりにカルネージハートエクサを起動した。
うっほ～い。
サクサク進む。自分の成長を感じる。手前味噌。
途中失敗することもあるが、その解決策を考え、乗り越えることができるようになっていた。実に面白い。面白いぞこのゲーム。
カルネージハートをプレイしてみて思ったことがある。
ゲーム作りとは「いかに裏側を見せないか」であると考えている。
ドラゴンクエストは上ボタンを押せば上に動き、話すコマンドを選べば村人と会話する。
この裏側では複雑な処理が行われていて、カルネージハートのような面倒くさいプロセスを経ているのである。これをコマンド選択型にして、勇者がいて、村人がいて……と楽しい冒険の世界にプレイヤーを没入させている。
これが裏側を見せないということである。
プレイヤー全員がゲーム開発環境を持っていて、プログラミングを理解していて、という状況であればグラフィックというものは必要ない。プログラミングの世界でコマンドライン上(マウスでの操作はせずに、PCの画面に処理が文字で表示される環境)で操作すればよい。
しかし、その裏側を見せずに敵を攻撃したら敵が倒れ、勝利のファンファーレが鳴る。レベルが上がる。この美しい世界を作るのがゲーム作りなのだと思う。
カルネージハートはどうだろうか。上記のような面倒くさいプロセスを経て、ようやくロボットが前進しただけである。攻撃も、後ろを振り向くことも、ジャンプもできない。だが、これがこのゲームなのだ。難易度は高いがゲームの中のゲーム作りを見せることでこの作品が成り立っている。
プログラミングをせずにチップを使うあたりは「裏側を見せない」というゲーム作りのインターフェイスになっているが、ほとんど裏側を見せてしまおう、という製作者の興味深い意図が感じられる。
このゲームをクリアすればスーパーマリオのようなアクションゲームを作る「考え方」を得ることができるだろう。あとはプログラミング言語のルールを覚えれば形はどうあれゲームを作ることができるはずだ。
カルネージハートを多くの方がプレイし、ゲーム業界を発展させる足がかりを得てほしいと思う今日この頃。
